進化した現代湯治の宿 栃尾又温泉 自在館

2026年 9月 訪問

今回の温泉旅は、新潟県の栃尾又温泉「自在館」にうかがいます。

秋雨の降る中、新潟の米どころ魚沼市に車を進めます。新潟地方は9月初旬なのでまだあまり稲刈りは始まっていない様子です。途中、八海山のふもとを通り抜ける時には酒屋へ寄りたくなる衝動を抑えるのが大変でした。

栃尾又温泉に到着。

魚沼市中心部から右折して、奥只見方面へ向かうルートを進みます。しばらくして左へ折れて進むと栃尾又温泉に到着。3軒の宿が寄り添い合って建つ温泉場です。

雨が降っているので早速中へ。

私は温泉が旅の目的なのでいつもチェックインは早いのですが、15時に宿へ入るとすでに数組の方がロビーでチェックインの最中。やはり湯治がメインの宿なのですね。

フロントロビーにはかわいいものが沢山。

栃尾又温泉は色々なメディアで紹介されているのでとても有名な温泉場。弱放射能泉のぬる湯に時間をかけてゆっくりと入る「長湯」の入浴方法が独特です。3軒の宿がそれぞれ異なるスタイルで営業していて、北から「宝巌堂」、「神風館」、「自在館」が3つの共同浴場を利用するのです。自在館は日本秘湯を守る会の宿で、独自源泉の貸切湯もあります。

民芸調でレトロなものが多く飾られています。

古来よりの湯治の姿は、私たち百姓などが農閑期に米味噌を背負って山奥や海沿いの宿へ出かけ、自炊をしながら数週間過ごして体の悪いところを癒すものでした。しかし、私の様な現在のじい様・ばあ様はみんな病院に通って薬やシップを処方してもらい、温泉湯治にはあまり行かなくなってしまいました。現代の百姓には出かけている時間がないのも一つです。

棚から好きな作務衣をかごに入れて使います。

その代わりに現在の湯治宿にやってくるのは若い人たち。特に女性が多いのです。現代社会のストレスが溜まって疲れた心と体を数泊の滞在で癒すのです。「現代湯治」と呼ばれ、「未病」と呼ばれるいつ病気にいつなってもおかしくない現代人に、温泉地の転地効果がとても効果的なのです。

ここ栃尾又温泉の泉質である「単純弱放射能泉」は、癖のない36℃ほどのお湯で長湯をしても湯あたりしにくいのが特徴なのです。他の強い放射能泉は湯あたりしやすいところもあるのです。

地下1階、106号、梅の部屋です。

前書きが長くなりました。早速部屋へ落ち着きたいと思います。今宵宿泊する部屋は本館地下1階の「トイレ無し1人旅専用湯治部屋」。予約の時には和室とあったので布団かと思ったのですが、畳にベッドの部屋でした。一汁四菜、基本の湯治プランです。

フロント階から降りた地下の部屋なのですが、渓流沿いに建っているのでちゃんと窓もありすぐ下に「霊泉したの湯」が見えます。廊下を挟んで貸切湯もすぐそこ。湯治にはもってこいの部屋の様です。

窓からのぞくとすぐ下に「したの湯」が見えます。

部屋の中にはタブレットがあり、貸切湯の空き状況や予約ができるのです。今回は利用しませんでしたが次は入ってみましょう。布団もすでに用意されているので作務衣に着替えて早速お風呂へ。

タブレットで貸切湯の予約ができます。

先に共同湯を3つの宿で利用すると書きました。部屋から見える「したの湯」、本館から連絡通路を渡って大正棟を通り、一度外へ出て向かう湯殿の中に「うえの湯」「おくの湯」があります。

栃尾又温泉は日替わりの男女入替で、初日はうえの湯が男性、したの湯とおくの湯が女性の日だったので必然的に「うえの湯」に入ることになります。

手前がうえの湯で先がおくの湯。ランプで男女が分かります。

栃尾又温泉の源泉温度は36℃ほど、ほぼ体温と同じ温度で、俗に言う「不感温度帯」になります。うえの湯には洗い場があるので体を洗って、かけ湯をたっぷりとして入りましょう。

ああ、最初はちょっと冷たい感じなのですがそのうち感じなくなってきます。不感温度なのですね。

「うえの湯」。(宝巌堂さんのサイトより参照)
「おくの湯」。(宝巌堂さんのサイトより参照)

温泉分析書を拝見すると泉質は単純弱放射能温泉(低張性アルカリ性温泉)」との事です。自然湧出で泉温は35.7℃。無色澄明、無臭、無味。栃尾又に伝わる長湯の作法でゆっくり入りましょう。放射能泉にはラジウム(ラドン)が含まれていて、この気体を吸い込み体内へ取り入れることにより、抗酸化作用がはたらくようで体を酸化から守ってくれるようです。又、成分は低い位置に溜まりやすいようなので、お湯に肩まで浸かって静かに時間をかけ、呼吸によって体に取り入れましょう。初日は約1時間お湯に浸かっていました。

風呂上り。大正棟に戻ります。

うえの湯の帰りに大正棟の中を徘徊してみます。連絡通路は本館と大正棟の2階へ繋がっていますが途中、急な鉄砲階段を降りて1階へ、古くからある部屋を覗いて進むとこれまた沢山の蔵書が並ぶライブラリーでした。

とっても急な鉄砲階段。足腰の悪い方は注意!。

程よくリフォームされている空間には飲み物が飲めるカウンターもあります。骨董と呼ぶには新しくてそれでいて懐かしい品々が上手に並んでいてとても落ち着いた雰囲気です。連泊して湯治をするとこのようなスペースがとても重要なのですね。

とても落ち着いた読書室になっています。
御同輩の狸さんもいらっしゃいました。
飲み物もいただけるようです。

大正年間築の大正棟には宿泊も可能。一人用の和室、メゾネットタイプの部屋、二間続きの部屋などに泊まれます。本当にゆっくりするのにはもってこいの部屋でしょう。いつかは利用してみたいものです。

部屋に戻り横になって過ごします。最近、神経痛がひどい時があったので今回はゆっくりしたいものです。初日は1時間お風呂に入り、ベッドで横になって夕食を待ちましょう。秋の雨の日、ぜいたくな時間ですね。食事は食事処と部屋食から選べます。今回は部屋食を選びました。午後6時から夕食です。

夕食は一什四菜の湯治食ですが十分です。

湯治宿なので食事が終わったら外のワゴンに乗せておくスタイルです。今宵は食後にすぐ横になって寝てしまいました。

翌朝5時。男女が入れ替わった「したの湯」へ向かいます。地下の部屋に宿泊なのでしたの湯へのアクセスはとても簡単。階段で降りるだけですが結構長いのです。

霊泉したの湯へ向かいます。

早朝よりすでに数名の湯あみ客がお風呂に入っていました。したの湯は源泉がとても近いそうなのでいいですね。早速かけ湯をたっぷりとかけてお風呂に入りましょう。

「したの湯」。(宝巌堂さんのサイトより参照)

温いお湯にゆっくりと浸かります。みなさん静かにお湯に浸かっています。したの湯は上の2つの浴室よりも小さいのですね。木造の湯屋はとても風情があってゆっくりお湯に浸かるにはいいものです。朝は2時間ほど、7時までお湯に浸かっていました。

朝食をいただき、時間まで横になって過ごします。心なしか神経痛もよくなったような気がします。まあ、空腹にご飯を食べたようには温泉の効果は出ないものです。こちらの様な湯治宿は数泊してゆっくりしたほうがいいですね。次回栃尾又を訪問する際は数泊する予定で来たいと思います。

栃尾又薬師堂。

滞在時は雨でしたので帰り際に栃尾又薬師堂を参拝しました。各地の温泉に伺うと薬師堂がある温泉地が多数あり、往時は温泉がお医者様や薬局の代わりだったようなのです。栃尾又温泉は子宝の湯としても有名らしく、こちらの薬師堂さんは沢山のキューピーちゃんが絵馬として納められていてほほえましいです。

周りには樹齢400年以上と言われる杉や欅の御神木に囲まれたお堂です。それだけこの温泉の御利益が大きいことがうかがわれます。

栃尾又の夫婦欅。

栃尾又温泉に宿泊して分かったのは、病になる前の「未病」の時に湯治で癒す温泉地なのですね。以前訪問した「増冨温泉」の強い放射能泉はがんなどの病気になってしまった人の養生する温泉でした。ここはそうならない前に健康を維持するのに最適な温泉なのですね。

お世話になりました。次回も楽しみにしています。

やはり湯治は1泊ではちょっと足りないですね。次回の訪問が楽しみです。秋雨に煙る栃尾又温泉を後にして次の旅に向かいましょう。

訪問日 : 2026年 9月

スタイル : 1泊2日 1人で訪問

経費 : 17530円/人 消費税・入湯税込み 一什四菜プラン

泉質 : 単純弱放射能温泉(低張性アルカリ性温泉)」源泉かけ流しです。

所在 : 〒946-0087 新潟県魚沼市上折立66 0257-95-2211

特徴・湯使い : 独特の「長湯」の作法で入浴する栃尾又温泉。宝巌堂、神風館、自在館の3つの宿で共同湯を利用する独特の温泉場。自在館は現代湯治として若い女性などに人気がある宿です。古い湯治温泉宿のスタイルを変えて浴衣ではなく作務衣など、気楽に湯治ができるように進化した宿です。日本秘湯を守る会の宿で現在のご主人は会長を務めているそうです。