霧積温泉 金湯館

霧積温泉 金湯館 宿泊記
2025年 5月 訪問
新緑が眩しい5月になりました。今回の温泉行脚は群馬県、霧積温泉「金湯館」さんへ伺いましょう。以前からとても気になっていた宿への宿泊です。

碓氷峠の入り口、玉屋ドライブイン右脇の道を進みます。登り始めは結構道幅も広く快適な道ですが、宿の駐車場が近くなってくると道幅はだいぶ狭くなります。まあ、「金湯館の専用道路」の様な道なのでほとんどすれ違う車はありません。

道中は新緑がとても奇麗です。所々に紫色の藤の花が咲き、ヤマボウシでしょうか白い花がとても美しいです。宿の駐車場が近くなった頃に滝が有りました。金洞滝とあります。今は新緑に遮られて滝の流れ落ちる様はあまり良く見えませんが、秋以降の落葉時にははっきりと見えるでしょうね。

滝からしばらくすると駐車場に到着。正面が「ホイホイ坂」入口で、左に以前金湯館の別館「霧積館」が建っていた跡地が駐車場となっています。現在は朽ちた水車小屋と倉庫が有るのみです。

宿に電話すれば送迎の車が来るのですが、今回は初めての訪問ですのでホイホイ坂を歩いて登りましょう。説明では約1キロメートル30分くらいの様です。さあ頑張って登りましょう。

歩き始めると結構ガレていて、ホイホイ坂とはよく言ったものですね。今は林道が整備されていて宿の車で送迎してもらえますが、往時はみんなこの道を歩いて温泉へ向かったのですね。

登ることしばし、林道へ出ました。しばし進むと最後は宿への下りです。もう少し気を抜かず歩きましょう。赤い屋根の宿はもうすぐ下に見えています。

やっと到着しました。霧積川に架かる赤い橋を渡って到着です。おとないを入れると女将さんが出迎えてくれました。

今夜は本館の部屋への宿泊です。現在本館は2階のみ宿泊客を入れているようですが、往時は沢山の宿泊客で賑わっていたものでしょう。今宵の本館泊は私一人の様です。まあ、本館は古い建物なので建付けが悪くなっていたり、又、廊下と障子一枚で鍵も無いので快適とは言えません。私は鄙びた温泉宿の部屋が好きなので、かえってこちらの部屋の方が良いのです。

今回宿泊した本館の建物は明治時代の築。説明によると伊藤博文を筆頭に30名ほどが来訪してこの宿で明治憲法の草案を練ったとされています。又、勝海舟も逗留中に乞われて石碑のヨハネ伝の一節を書き、与謝野晶子も訪れて歌を残しています。金湯館はとても歴史が有る宿なのですね。

さあ、旅の荷を下ろしたら早速お風呂を頂きましょう。湯殿は川下の建物で内湯のみです。
ああ、そうそう、お風呂に入る前に新館の玄関先にある岩清水で水分補給してからが良いですね。とても冷たくて美味しい水です。後で覗くとお客さんがビールを冷やして有りました。


さあ、やっと湯殿です。かけ湯をたっぷりかけてお湯を頂きましょう。源泉温度は39度程で温湯(ぬるゆ)好きにはちょうどいい浴感ですね。じっとしていると肌に細かな泡がびっしりとついてきます。

温泉分析書を拝見すると泉質は「カルシウムー硫酸塩泉(低張性弱アルカリ性温泉)」とのことです。無色澄明で僅かに硫化水素の香りがしてとても良い感じのお湯です。以前の泉質名では「石膏泉/せっこうせん」と呼ばれ、「傷の湯」「脳卒中の湯/中風の湯」と言われているお湯です。
源泉温度が程よいので結構な量の源泉が大量に投入されていて、溢れたお湯はもったいないくらいジャブジャブとかけ流されています。見ているだけで幸せを感じますね。
ああ、私はこのくらいの香りの温泉が大好きなのです。このお湯はいつまでも入っていられますね。夏場にはとても良いと思います。極楽浄土の心地です。

お風呂から出て辺りを散策しましょう。本館と霧積川の間のちょっとした庭先に勝海舟の書による「ヨハネ伝4章14節」の石碑が建っています。その隣には西條八十の「麦わら帽子」の詩が描かれている掲示板が有り、その奥の離れであの有名な小説「人間の証明」を森村誠一氏が執筆されたようです。そう、この宿は人間の証明に登場する宿なのです。そのためでしょうか、いたるところに麦わら帽子が有ります。達磨さんもかぶっていました。


お風呂に入りゆっくりしていると、あっという間に夕食の時間となりました。食事は部屋食です。今夜は岩魚骨酒もお願いしておきました。こちらの宿は山菜の天ぷらが名物です。帳場前に本日の天ぷらのお品書きが出ていたので見てみると20種類もあるそうです。

普段中々食べることのないような山菜が出てきます。具沢山の豚汁もボリューム満点。たけのこご飯は山椒の木の芽が良いアクセントですね。流石に食べきれませんでした。


ゆっくりと夕ご飯をいただき、後は宿の本棚に有った「人間の証明」を読んでいるうちに夜も更けてしまいました。おやすみなさい。

霧積川の音を聞きながら夜が明けました。朝のお湯に浸かりながら窓の外の新緑を堪能します。私は紅葉も良いですが新緑の時期がとても大好きです。庭にはシャクナゲやツツジの花が丁度見ごろを迎え、とても奇麗です。

朝ごはんはこれまた立派なものです。山菜の佃煮や具沢山の味噌汁が食欲をそそります。食べ過ぎてしまいますね。

食後もお湯に入ったりして、ゆっくりした時間を過ごさせて頂きました。出発にはあの「おにぎり弁当」を作っていただいて宿を後にします。
帰りのホイホイ坂はだいぶ楽ですが気を抜かずに下りましょう。


お昼になり、どこか景色の良い場所で宿で作ってもらった「おにぎり弁当」をいただこうと思っていたのですが、榛名山へ登ってみるとあいにくの雨でした。残念・・・。仕方がないので車の中でいただきました。
次回の訪問を楽しみにしましょう。
旅の記録
訪問日 : 2025年 5月
スタイル : 1泊2日 夕朝昼3食付き(昼食はおにぎり弁当)
経費 : 13800円/泊 岩魚骨酒 2000円 消費税入湯税別 1人で訪問
泉質 : カルシウムー硫酸塩泉(低張性弱アルカリ性温泉)
湯使い : 源泉かけ流し
特徴 : 僅かに硫化水素臭が香る、39℃ほどの温めの源泉がジャブジャブと惜しげもなく投入されて溢れています。